シール帳

はってはがせるたのしいシール帳

琥珀色の街、上海蟹の朝は好きだよ

複合的な理由によりApple musicに仕方なく加入し続けてる。

何らかの曲を選択し再生が終わっても放置していると、Appleが似たような曲と判断した次の曲を自動的に再生してくれる機能があって、耳塞ぐために音楽聞くタイプの人間には便利なんです。

それで、今日もすれ違う瞬間舌打ちしてくるタイプのおじさんのそれを聞こえないようにして人間のひとつひとつの生臭さをキャンセルし世界を小さくするためだけの音楽を聞いていたら、ハナレグミカバーの男の子と女の子が流れてきた。

歩いている途中なので歌詞聞くくらいしかすることがない。

「女の子のことが大好きでいつも女の子のこと考えてる、女の子はわがままで何も返してくれない、でも優しくしちゃう。。。」

はい。

「小学生くらいの男の子と女の子 男の子同士の遊びは楽しそうだ 割って入ってくる女の子はふてくされ こんな世界はつまらないと ひとりで遊ぶ」

あら……

「小学生くらいの男の子 世界のどこまでも飛んでゆけよ ロックンローラーになれよ」

「欲望を止めるなよ」

??

「コンクリートなんかかち割ってしまえよ」

いや、こんな世界はつまらないと一人で遊ぶ小学生くらいの女の子のことは?って、え?って、ならんか? いやなんかびっくりした、女の子のことばっかり考えちゃう……から一人で遊ぶ女の子の背中無視して唐突に男の子たちにロックンローラーになれよて語り掛けると思わないじゃんだって……あーなんか、ほんと、びっくりした。当たり屋にあった気分っていうか……ロックンローラーになれよっていうのも、なんで?だし。小学生のとき数人で公園などで遊んでいるとよくわからないことを話しかけてくる謎の大人がいた、あの瞬間の大気のざわめき。あれはこの曲だったんだな……てゆーか女の子のことばっかり考えちゃうんじゃないのかよ、女の子のこと考えろよちゃんと。宮本サクラが可愛いだけの小説を満天笑顔で試し読みしたら冒頭から主人公くんが宮本サクラではない女の子三人に風呂で体洗われている挿絵でキレそうになったこと思い出しちゃった。宮本サクラが可愛いだけの小説をやれよちゃんと。だけのってどういう意味か分かってる?

はあ。ほんとげんなりする。

駅のホームですれ違うおじさんからの不愉快な舌打ちを消すために聞いてる音楽でお友達どうしで楽しく遊んでる公園で話しかけてくる知らんおじさんっぽい馴れ馴れしさにぶつかられると思わなかった。ていうかこのタイプの人の言う女の子って、すごい狭い、一部の中の一部を指すカテゴリーでしょ。男の子未満かつ女の子未満の何かはノイズキャンセリングされてる世界。笑っちゃうよ。20年前の曲に今更、深夜に。こんな世界はつまらないってふてくされて一人で遊ぶ小学生くらいの女の子のことが頭から離れない。

帰り道、自転車で上り坂に差し掛かったとき、自動再生から、頼りない天使が流れてきた。

雨に濡れた車道が光って坂の向こうからは湿った風が吹いてくる。

予感は去って、余韻だけが残る。

遠い夜空の向こうまで連れてってよ、あの娘の天使のとこまで連れてってよ……